マスター小説「佐世保いろは」！第二話・いろは楼の足跡
前のお話
第一話・はじまりの物語
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第二話・いろは楼の足跡
ある夜のバー。
バーテンダーである彩葉みふねは、お客さんに自分のルーツにまつわる写真を見せていた。
「ねぇ、みふねちゃん！ここ相生（あいおい）橋って読めない？」
「あっほんとだ！！確かにそう読めますね！！」
かつて佐世保にあった料亭”いろは楼”の写真。4階建てだろうか？和風の立派な建物に気を取られて気付かなかったが、手前にかかる橋の欄干にはたしかに相生橋と書いてある。
「相生橋なら今もあるよ！！」
「えっ本当ですか！！明日さっそく行ってみます(^^)」
次の日！いつもより早起きして家を出る。
やっとつかんだ”いろは楼”の手掛かりである！一刻も早く確かめに行きたい！！
長崎県佐世保市相生町は市役所や警察署などが近く、官公庁街といった雰囲気のエリア。
実際に訪れると佐世保市街地のはずれ。
「こんな場所にあったの？」
と思ってしま場所。
現在の佐世保市は”佐世保駅”から”四カ町アーケード”までが市街地の中心になっているが、かつては松浦町より北側、つまりこの相生町あたりが市街地の中心地だったそうだ！！
バスを降りた。
はじめて見る景色、はじめて来た場所なのにみふねは
「ここで降りなきゃ！」
とわかった！！
それは、みふねに流れる血がそうさせたわけではない！
たまたまバス停の名前が
そのまんま、「相生橋」だったからである！
相生橋バス停がある公園は
とても小さな公園。
名前は「相生児童公園」と言うそう。
公園の前の道路を渡って
橋の名を確かめる！！
「相生橋！「間違いなくここだ！！」
胸が高なるのを抑えるため、みふねはふと静かに目を閉じた！
「ここにあの”いろは楼”があったんだ・・・」
写真を見てから、ずっとずっと憧れていた”いろは楼”。
この時のために、人生を賭けて佐世保までやってきて、ようやくその場所にたどり着いたのだ。
建物が残っていない事はわかっている。
壁のほんの一部分でもいい、ここに”いろは楼”があったと言う足跡さえあれば・・・
静かに目をあけて、その場所を見つめる！！
”いろは楼”があった場所の現在。
そこにあるのは、コンクリートの壁！
最近できたであろうマンション！
そして
新しくはないが、そこまで古くない小さな食堂！
かつて料亭だった痕跡は何もない！
現実は、みふねが思っていた以上に厳しかった！！
今も昔も変わらないのは、目の前を流れる佐世保川の流れだけ・・・
何の痕跡も残ってはいないけれど、ここに”いろは楼”があった事は間違いないんだ！！
みふねは佐世保川のそばの木陰にある古い柵のような場所に腰をかけた。
海の方から吹く風を感じつつ、しばらくの間、今はなき”いろは楼”の姿を想像して時間を過ごした。
そうそう！！
当然彼女は知るはずもないのだが・・・
たまたま腰かけた、この石でできた古い柵！
かつてみふねの曽祖母にあたる”いろは楼”の女将も座った場所である！
ところで！！
相生橋を向かって、右側が相生町！
左側は元町、泉町、上町、元町、長尾町などの地名がある。
このあたりは町の境目がかなり入り組んでいて、佐世保市民でも今いる場所が何町なのかわからないくらい複雑である！！
区画整理されるよりずっと前。とても古い街と言った感じがする！
車では絶対に通れない、道幅の細い道や
坂や階段がとにかく多い！！
この地域には、昭和後期まで荷物を運ぶための馬がいたと言うのは紛れもない事実！！
この地域を散策するには徒歩しか手段がない！！
実際に歩いてみると、想像よりも立体的な構造で、平面の地図で見るよりもさらに複雑！！
油断すると迷う可能性があるのでナビは必須！！
佐世保の中でも特に古い時代の雰囲気を今に残す場所！
”いろは楼”だけではなく、たくさんの料亭、置屋などが立ち並んでいた地域だそうだ。
ちょっと過去の時代にタイムスリップ！
昔の佐世保の人たち。
制服を着た帝国海軍の士官。
海軍提督も歩いたであろうこの道！
もちろん！
みふねの曽祖母もこの道を歩いた・・・
太平洋戦争の前後の激動の時代！！
今では決して語られる事のない、多くの物語がこの街にはあったのである！！
（注意）このお話はフィクションです！！
次回予告！！
第三話・佐世保の百合
戦前より佐世保にあった料亭「いろは楼」！
そこには「佐世保の百合」と呼ばれる、伝説の女将がいた！！
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