マスター小説「佐世保いろは」!第一話・はじまりの物語
第一話・はじまりの物語
この日もバーのカウンターには数人の男性客!
カクテル片手に話に花が咲く!
一人が女性バーテンダーに声をかけた。
「このカクテルなんて名前なんだっけ?」
「はい!このカクテルの名は『フレンドシップ』!!かつてお店の危機を救ってくれた『仲間』のために、マスターが創作したオリジナルのカクテルです。」
「へぇ~なんだかいい話だね!!」
「他にも『空母信濃』とか『氷川丸』とか、あとは『サンフランシスコ航路』、『今夜ばかりは』、『榛名の夢』なんてカクテルもありますよ。」
「なんか変わった名前もあるね!?」
「いえいえこんなのは序の口!もっと変わった名前のカクテルがあります!」
「どんなの??」
「『ドックのクレーンちょっとロマンを感じます!』」
「マスターもどういう経緯でそんな名前を付けたかわからないけど、なんか面白いね!!せっかくだからそれ一杯もらおうかな!!」
ここは長崎県佐世保市のとあるバー。
海軍、特に太平洋戦争時代の海軍史が好きな人達。通称”提督”達が集まるバー。
「そういえば、マスター最近どうしてるの??」
「たぶんイベント中だから、家でゲームでもしてると思いますよ!!」
このお店は、かつてはオーナー兼マスターが一人でやっていたのだが、彼女がお店で働き始めてからはあまり姿を見せる事はない!!お店の経営はすべて彼女にまかせている。
そのおかげかお客さんは急増した!!
彼女は”提督”と呼ばれる人種の人から好かれる特別な才能を持っている。
知識や技術、経験に勝る彼女の才能を見抜いたからこそ、マスターは一線から身を引いたのである。
そうそう!!
このお店を任されている女性バーテンダーである彼女!!
名前は・・・
彩葉みふね
(いろはみふね)
年齢は23歳、出身は兵庫県。
学生時代までは実家暮らし。地元の大学へ行き卒業後、一人佐世保へと移り住んだ。
彼女が佐世保に住みたいと思った理由。それは亡くなった祖母が佐世保出身だったから!!
シングルマザーだったみふねの母はいつも仕事で帰りが遅く、家で過ごす時間はいつも祖母と二人。
彼女は『みふね』と言う名前がちょっと古風だな~なんて思った時期もあったが、大好きなおばあちゃんが付けてくれた名前だからと今ではとても大切に思っている。
そんなおばあちゃんとの別れは、大学卒業間際に突然訪れた!
お葬式が終わって、遺品を片づけていた時に偶然見つけた一枚の古ぼけた写真。
そこに写っていたのは、大きな和風木造建築の建物。
その前に立つ着物を着た女性と、女の子。
女の子は幼少期のおばあちゃん、着物を着た綺麗な女性はおそらく、おばあちゃんのお母さん。みふねにとってはひいおばあちゃん!
色あせた古い写真でもはっきりわかる、昔の人とは思えない美しい女性!!
みふねは、その写真について母に尋ねてみた。
母の話によれば、祖母の生まれは長崎県の佐世保市。
祖母の家は第二次世界大戦以前より佐世保鎮守府の海軍士官達に愛された料亭を営んでいて、その名前は確か・・・
「いろは楼」!!
(画像参照:http://nnmymsm.web.fc2.com/infoseek/sasebosyasin.html)
それを聞いてインターネットで調べてみたのだが、いろは楼について詳しい情報は出てこない!!
いつもなら「まぁいいか~」となるところだが、この写真だけはどうしても気になる!
なぜそう思うかはわからないけれど、この写真が自分の人生にとってとても大切な物だと感じる。
今までは『周りがそうしているから』とか、『学校の先生がそう言うから』で決めていた人生。
自分で『何かをしたい』なんて思ったのはこれが初めての事!!押さえきれないこの感情!
地元で手堅い就職先が決まっていたのだが、反対する母を説得。
内定を取り消して、彼女は一人、自らのルーツを探すため佐世保へ旅立った!!
そんなわけで、あてもなくやってきた佐世保!
佐世保に来れば、自分のルーツである『いろは楼』の事が何かわかると思っていたのだが、実際には何をどう調べれれば良いのかがわからない!!
友達もいないこの街!
寂しさに負けてしまいそう!!
誰が書いたかわからない
『友達を作るなら絶対にバーがおすすめ!!』
なんてネットの記事をうのみにして、生まれて初めて入ったバー!!
階段を上がると、カウンターに立ち並ぶたくさんの洋酒のボトル!
あまりに本格的なバーだったので
「流石にちょっと背伸びしすぎたかな??」
最初はそう思ったけれど、そこに集まるお客さんはみんな親切で心やさしい人ばかり!!
彼女は居心地の良さから何度かそのバーに通った。
とある夜の帰り際!
バーのマスターから
「君、うちで働いてみない??」
そして彼女は、バーデンダーになった。
これが、
『提督で知らぬものなし』
とまで言われる彩葉みふねの物語のはじまりである!!
すぐに彼女は提督達の間で有名になり、人気者になっていくのだが・・・
それが彼女のひいおばあちゃんである戦前戦後の激動の時代、海軍士官に愛された伝説の料亭「いろは楼」の美人女将の血だと言う事に、彩葉みふね自身はまだ気づいてはいない!
(注意)このお話はフィクションです!
次回予告!!
第二話・いろは楼の足跡
戦前より佐世保にあった料亭「いろは楼」!唯一の手掛かりである写真に、いろは楼があったであろう場所を表すヒントが!!彩葉みふねがその足跡を探しに行く!!
続きはこちら
https://lacouleurs.com/2020/05/13/post-7539/
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